プロジェクトレポート Project Report Vol.6

流通産業

流通産業

食品メーカーをはじめ、物流や商社、小売店など、
食ビジネスのサプライチェーン全体に、幅広い顧客を持つ流通産業本部。
業界の課題を捉えた提案で、人々の「食」を支える事業に貢献する。

Outline ▶ グループ連携により、食農分野で顧客を支援

JA系統をバックボーンに持つJAMLにとって、食と農に関わるサービス・ソリューションは重点取組分野のひとつ。食品・流通・物流関連企業を主な顧客とする流通産業本部は、JAMLの主要株主である農林中央金庫のビジネスとの親和性が高く、その連携案件がひとつの柱となる。「資金調達をめぐる相談がお客様から農林中央金庫に寄せられたとき、JAMLが加わることでより幅広い提案ができます」と話すのは流通産業第一部の伊藤 靖だ。例えば食品会社が工場の新設を検討した際、数十億円にのぼる設備・機器の導入のためのリースをJAMLは提供できる。また、物流倉庫の人員不足を課題とする顧客から「ピッキングエリアをもっと少人数で回せるようにしたい」といった要望を受けることも少なくない。そうしたとき、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進を提案し、作業の省人化に必要な設備を考え、設備サプライヤーとのマッチングから支援できるのも強みだ。
最近ではリースや割賦だけでなく、債権・不動産の流動化など、顧客のバランスシート上の資産を活用して資金調達を図る例も増えている。「ニーズが多様化する中、全く白紙からの提案が必要なことも多々あります。情報収集を徹底し、お客様の課題は何か、どこにビジネスチャンスがあるかなど、シナリオ策定には時間をかけ綿密に行います」と伊藤は姿勢を示す。

Progress ▶ 環境対応を軸に新たなファイナンスを創出

「食」の流通に欠かせない冷凍冷蔵倉庫へのニーズが拡大する中、2020年には新たな動きもあった。デベロッパーと食品物流会社、およびJAMLの3社が、冷凍冷蔵倉庫の新築・建替えについての業務提携を締結。「大手食品会社であれば自前で倉庫を持ちますが、中小企業では難しいもの。今回のパートナーシップにより私たちが大型倉庫を設立し、個々の企業に必要な面積を賃貸することが可能になります」と伊藤。JAMLはその中で冷凍冷蔵設備などのファイナンスを担う。マルチテナント型のビジネスを通し、より多くの顧客ニーズに最適な形で応えていく。
また現在、さまざまな案件で鍵を握るのが環境対応だ。これまでにもJAMLは、ノンフロン・省エネ型の冷凍冷蔵庫や空調機器などの導入による補助金とリースを組み合わせた提案を行ってきたが、近年ではSDGs(持続可能な開発目標)※1やSBT(Science Based Targets)※2が新たなキーワードとなる。これらに取り組む企業には補助金・助成金がさまざま用意されるほか、機関投資家によるサステナブル投資の流れも進む。「現状、SDGsやSBTに対するお客様の意識にはバラツキが大きいのですが、設備導入などを機に環境対応型のビジネスを提案し、新たなファイナンス機会の創出を目指しています」と伊藤は語る。

※1:2015年9月の国連サミットで、国連に加盟する全193カ国によって採択された世界共通の目標。2030年を目標年として、社会・経済・環境の3分野で17目標を定める。

※2:産業革命時期比の気温上昇を2℃未満とするために、企業に対して科学的知見と整合した削減目標を求める国際的なイニシアチブ。

Future ▶ 海外での食ビジネスに見出す可能性

継続的な事業成長のためには、グローバルに存在感を発揮していく必要がある。従来、食品業界が対象としてきたのはドメスティックな市場だ。例えば、日本のスーパー、コンビニで販売されるようなチルド食品や冷凍食品は、東南アジア諸国では普及していない。食文化の違いや、コールドチェーン(低温物流)が確立されていないことが背景にある。しかし伊藤は、「日本の果物や魚介類は海外でも強い人気があります。JAMLが輸送用のコンテナをファイナンスして物流網を整える、またはJA系統のネットワークで現地ニーズに合った商品をつくる農家を探すなど、強みを活かした展開は十分考えられます」と展望を語る。一方、国内に目を向ければ、高齢化による労働人口減少の影響はますます大きくなる。食品業界はこれまで、製造から流通、販売まで人手に頼ることの多かった業界だが、現場の省人化・ロボット化へのニーズは確実に高まりつつある。「さまざまな展示会に参加して最先端の設備を学んだり、サプライヤーを開拓したりといった努力も欠かせません。業界の潮流を捉えて、パートナーを増やしながらより踏み込んだ提案を目指していきたいですね」と伊藤は意気込みを見せる。

Ito’s Comment

私たちが普段向き合うお客様は、最終ユーザーが一般消費者であるBtoC企業がほとんどです。例えば、あるメーカーの新工場設立にあたって製造設備をリースすると、翌年にはその工場で作られた食品がコンビニに並ぶなど、最終商品を身近に見ることができます。世の中に出てくる商品に、何らかの形で関われるのはこの仕事のおもしろさだと思っています。お客様が日本有数の大手企業だけに高度な提案を求められることも少なくありませんが、競合他社が多い中、「そんな提案は初めていただきました」など言ってもらえたときには大きなやりがいを感じます。

伊藤 靖

伊藤 靖

流通産業第一部
2013年入社
※キャリア入社

※取材は2020年10月時点の内容です