プロジェクトレポート Project Report Vol.3

建物・不動産

建物・不動産

JAMLグループの不動産事業は、今やリースにとどまらない。
「金融×不動産」を持ち味に、建物の企画から土地の取得、建設、完成後の運用まで
一貫してリードし、社会と経済に活力を呼び込む。

Outline ▶ 不動産開発を起点とするビジネスに注力

不動産業界には、不動産の開発や賃貸による運用、売買・賃貸借の仲介など多種多様なビジネスが存在する。近年は不動産と金融の融合(証券化)も進み、不動産マーケットは非常に複雑化・高度化した状態にある。そうした環境の中、JAMLは戦略的グループ会社のJA三井リース建物(株)(以下、JAMLT)と連携し、金融分野で培った企画力と豊富な資金力、JAグループ・三井グループにおける幅広いネットワークを活用して、リースやファイナンスの域にとらわれない、付加価値の高いサービスやソリューションを提供している。リース会社として早くから不動産分野に進出してきたJAMLグループは「建物リース(丸ごとリース)」を基本スキームに存在感を発揮してきた。これは、お客様が利用したい工場や倉庫、店舗などの不動産をJAMLグループが所有しリースでご利用いただくことで、資金ニーズにお応えしたり資産のオフバランス化(会計上資産・負債に計上しないこと)をサポートする商材だ。現在は不動産開発を起点とするビジネスに力を入れ、JAMLグループが中心となって企画・建設した建物を賃貸や卸売、売却するスキームを展開。不動産の保有代行(ブリッジ)や流動化などによるソリューションも顧客に提供している。そしてさらなる事業領域の拡大を目指し、2023年2月、新たに「事業開発チーム」を設置。「JAMLTがこれまで取り組んでいないアセットタイプの事業化や案件組成により不動産業界におけるプレゼンスをさらに高め、基礎収益を増強することを目指して活動をスタートさせました」と語るのは、このチームにおいて事業開発責任者を担う前田智秋である。始動したチームが早速着手したのが、ハイパースケーラー向けデータセンターの開発プロジェクトであった。

Progress ▶ 新領域・データセンター開発への挑戦

ハイパースケーラーとは、100万台規模のサーバーリソースを保有する企業を指す。そのサーバーやネットワーク機器を設置するために建てられるのがデータセンターだ。多くのハイパースケーラーは、データ使用量の多い都市部の近くにデータセンターを持つことを望む。しかし、膨大な数のサーバーを収容できる建物をつくれる面積があり、必要となる大量電力を確保できるという条件を満たす土地は限られてくる。土地の確保が関門となる一方、そこがJAMLTがバリューを発揮するポイントともなる、と前田は言う。「ハイパースケーラーの多くが海外の企業。彼らが日本国内、中でも都市部の土地を確保するのはとてもハードルが高いのです。そこで、当社の豊富な不動産開発実績やそこから蓄積している国内のネットワークやノウハウが強みとなります」JAMLTは三井物産との連携のもと、条件を満たす土地の確保に成功。データセンターの新規開発に向けて、ゼネコンや設計会社のアレンジを進めている。データセンター開発はJAMLTとしても新たな試みとなる。コンセンサスを得るための社内での働き掛けにも取り組んだ、と前田は振り返る。「どんなマーケットなのか、どのようなスキームで展開し、収益はどの程度見込めるか、将来展望は。説明会を行って、理解浸透を図りました。このプロジェクトについては新領域であるとともに規模が大きく多額の金額が動くため、案件推進に際しては通常の稟議に加えて取締役会にかける必要もありました。稟議書の作成やプレゼンテーションも丁寧に行っていく大変さはありましたが、同時に、自分の力で新しいフィールドを切り開いているという手応えも大きかったですね」

Future ▶ ビジネス領域拡大に挑み、不動産事業を躍進へ

ハイパースケーラー向けデータセンターの開発については引き続き注力していきたい、と前田は言う。「この領域においてさらなる実績を獲得するためにカギとなるのが、データセンターの開発エリアなどについてハイパースケーラーのニーズを的確に把握することです。セキュリティ上、どの場所にデータセンターを設置したいかは開示されないため、さまざまなネットワークを通じて情報を収集することになります」そこで問われるのが、約束は必ず守る、コンプライアンスを徹底する、といったことから育まれる信頼性だ。ダイナミックなビジネスを展開する一方で、その基盤を支えるのが人と人との信頼関係であることは興味深い。そして今後を見据え、事業開発チームが注目しているのがエッジデータセンターである。これはデータ使用者から近い距離に設けられる小規模のデータセンターで、ネットワークの遅延を防ぐとともに強固なセキュリティ体制を備えることも可能である。「ハイパースケーラー向けほど大きな規模ではありませんが、企業や病院、教育機関などを中心に、これからはこのようなエッジデータセンターのニーズが高まっていくのではないかと考えています。日本ではこの領域のマーケットが確立していない。提案の訴求力を磨き鮮度の高い情報を収集しながら開発実績を積み重ねることで、マーケットを確立するところから当社がリードできれば、と考えています」デジタル化社会を支えるインフラ整備に携わる領域に加え、事業開発チームでは不動産運営企業等への戦略投資や、プロップテック(不動産×テクノロジー)で世界をリードするアメリカのファンドへの投資などを通じてビジネスフィールド拡大を目指す。アグレッシブな挑戦で、前田たちはJAML不動産事業のさらなる飛躍を目指していく。

Maeda’s Comment

現在携わっている事業の成長と、事業領域の拡大。JAMLTは現在、この両輪で不動産事業の躍進を目指しています。後者を担う立場として目指すのは、実績を積み重ねて収益事業を確保すること。そして事業開発「チーム」を「部」へ押し上げ、JAMLTになくてはならない存在という認識の浸透を図ることです。不動産事業に携わる面白さは地図に残る仕事ができることであり、今手掛けているデータセンター開発プロジェクトについてはデジタル化社会の進展に関わるやりがいも抱いています。自分はもちろんJAMLグループにとっても新たなフィールドへの挑戦。前例がなく、どのアクションについても仮説を立て一つひとつ実証しながら進めていく粘り強さが求められますが、自身の経験値が高まるごとにグループの、そして社会の発展に微力ながら貢献しているという喜びを感じています。

前田 智秋

前田 智秋

JA三井リース建物
事業開発チーム
2007年入社

※取材は2023年8月時点の内容です